曇りの金曜日
鉄砲玉みたいに姿をくらましていたトニー(俺)が30年振りにファミリーに戻ってきた。若頭No.2(俺の父)が死んだのを知り、葬儀に出る為田舎に帰って来た訳だ。ドン(本家のおじさん)は、30年振りに顔を見せに来たトニーを暖かく迎え入れ、ファミリーメンバーからの小さな揶揄さえ許さないかのように庇った。他のおじおば達も、突然現れたトニーに驚きながらも友好的に迎え入れてくれ、葬儀はつつがなく滞りなく終わった。ドンがトニーを終始隣に座らせたのは、居場所なさげなトニーへの気配り。それにしても喪主(後妻)席の列に座らされたトニーは強烈に緊張していた。
30年振りに見る棺の中の父の顔にはもう覇気は無かったが、覚悟を決めていた筈の30年ではあったがやっぱり涙は出た。トニー独りが嗚咽を漏らしていたかもしれない。
ドンは、これからはマメに顔を出すようにと、何度も何度も説き伏せるようにトニーに言った。トニーはそれを本心と受け取り、そうすると約束をして、自分の連絡先を書いて渡した。移動した本家の墓を探し続けて30年、今回その場所をおじから聞き、行ってみると何てことはない、墓地真正面の良い場所に鎮座していた。今までこっそりと墓参りをしに来る度に探し続けて見つけられなかった本家の墓は、あっという間に見つかった。
離婚したから関係も希薄なのだろうに、母方のおじが入院しているとの情報をもたらしてくれたのはドンの妻からだった。何から何まで、今のトニーに必要な事を教えてくれたのがファミリーのメンバーからだった。もう抗う必要は無く、ファミリーに戻ろうとトニーは思った。窮屈な面は確かにあっても、それ以上に暖かいものを感じ、それで良いと思った。田舎に残っているメンバーは血縁の配偶者だけになっているのも多く、そういう末端のメンバーまでも最後まで安心して生活できるようにファミリー全体でサポートしている実態が垣間見える。それで良いと思った。
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登場人物をイタリアマフィアに例えているけれど、今回の葬儀前後で感じた本当の事です。頭の中ではゴッドファーザーのテーマがずーっと鳴ってましたw。マフィアとの違いは血の抗争が無い事です。ただの田舎の漁師町での小さい出来事です。
昨日の画。本家の墓辺りから見下ろした海は穏やか。
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